最近空き家が全国的に増えてきて問題になってきているとよく聞くようになりました。 この空き家問題については以下のことが考えられます。
こうしたことは一般的な社会問題として人ごとのようですが、一番問題なのは自分たちの実家もいつかそうなる可能性があるということです。
自分の実家以外にも、配偶者の実家、親の実家(祖父の家)まで考えると実家の相続はほとんどの人が経験することになります。
私たちは菊池市・山鹿市・合志市・菊陽町・大津町・植木町・玉名市など熊本県北部で、20年以上不動産の相談を受けてきましたが、知っておくだけで、ちょっと準備をしておくだけで、こんな大きな問題にならずにすんだのにということを数多く感じてきました。
そこで実家を相続するにあたって、今知っておいた方がよいこと、将来やるべきことなど、相続や空き家でトラブルにならないようにいくつかのポイントをお伝えしたいと思います。
目次
次のいずれかの状況にある方は、実家のトラブルが起きやすいので特に注意が必要です。
実家が空き家になった場合、誰が管理をするかという問題が発生します。
管理とは具体的にいうと、建物の管理、庭の草木の管理、固定資産税や負担金などの金銭的負担などがあります。
思い入れのある実家ですから、きちんと管理していかないといけないという認識はあっても、実際に空き家を管理していくのは結構大変です。
ましてや実家が遠方だと旅費や時間の問題で、だんだん管理ができなくなるというのが実状です。
また実家の近くに住んでいるという理由で誰か一人が管理をお願いされて、地元にいない他の兄弟姉妹は任せっぱなしというケースが多く見られます。
そうなってくると誰かにしわ寄せがきて、不平不満が出てきて、兄弟姉妹の仲もだんだん悪くなったりします。
このように管理は思った以上に大変ですが、相続登記をしてもしなくても行なっていかなければなりません。
一方、誰か一人が相続した場合、公平な遺産分割という意味でトラブルになるケースがあります。
特に実家以外に相続財産がほとんどない場合、実家は物理的に分割することができないため、他の兄弟姉妹とのバランスが取れなくなります。
そうなると実家を相続する代わりにお金を払った方がいいのかという問題が起きてきます。
相続した実家を売却して、売れたお金を兄弟姉妹に分配するということもありますが、実際には売れないということもあります。
例えば立地や建物の老朽化の問題以外に、法律上建て替えができないというケースです。
それは元々建った頃は建築の基準が緩やかで、どんな条件でも建築できたかもしれませんが、現在では法律が変わって新たに建築ができなくなっていることがあります。
いざ売却となって初めてその事実を知らされるということも多々あります。
親が病気や認知症などで施設に入らなければならない状況になった場合、実家が空き家になっていまします。
退院したらまた実家に住むでしょうが、そのままずっと実家に帰らないケースもあります。
このようなケースも誰が管理をするのかという問題が出てきます。
施設に入っているとはいえ、着替えを持って行ったり、現金の管理などは誰かが行なわなければならず、加えて実家の管理までとなるとさらに負担が増えます。
以上のように実家をめぐるトラブルは誰にでも起こりうる身近な問題ということが言えます。
これまで多くの空き家トラブルを見てきましたが、一番困るのは身内で揉めることです。
これは当事者にとって精神的に一番嫌なことですが、話し合いがきちんとできて意見が一致しないと何も解決できません。
それができずに結局そのままの状態が続いて、兄弟姉妹のうち誰かが亡くなり、相続人が子・孫にまで及んで、とうとう手が付けられないということが多々あります。
揉めるケースの典型的な事例は誰か一人に管理の負担がのしかかっているケースです。
時間が経ってくるとそれが当たり前になって、全くタッチしない他の兄弟姉妹への不満から揉めることがほとんどです。
管理している方も歳をとって草刈りがしんどくなり、いつまでこれを続けなければならないのかと、他の兄弟姉妹に相談しても自分たちは遠いのでどうしようもないと突き放されてしまい、これまで仲のよかった兄弟姉妹が疎遠になっていきます。
そこにお互いの配偶者が色々と主張してくるとさらに話がややこしくなってきて、とうとう誰も管理しなくなり、空き家が放置されてあっという間に老朽化が進みます。
老朽化が進むと安全性の問題が出てきます。
道路に瓦が落ちてきたり、子供が勝手に入って遊んだりして、人に危害があると工作物責任といって所有者に損害賠償責任を問われることもあります。
そうなると解体せざるを得ない状態になり、その解体費用をだれが負担するかという問題まで発生してきます。
仮に解体すると、これまでの土地の固定資産税が約6倍に跳ね上がります。
建物が存在している間は軽減措置の適用を受けられていたので、課税額は少なくてすみましたが、解体後は適用を受けられません。
また、更地になると草刈の面積が増えることになります。
こうした負のサイクルが加速していくと、もう止めることが難しくなってきます。
このように手がつけられない状態になってくると、みなさん実家は相続せず放棄しますと言われます。
しかし放棄とは、他の財産も含めて全て相続しないということになりますので、現預金も1円も相続できなくなるということになります。
また、放棄は相続を知った日から3ケ月以内に家庭裁判所に届け出なければならないため、そもそも時間が経っていれば放棄の手続きもできません。
それなら市に寄付をするという方もいらっしゃいますが、これも受け取ってもらえません。
行政は受け取った以上管理する責任がありますので、そんなことに税金が使えるはずがありません。
ではいくらでもいいので誰か買ってくれ、もしくはタダでもらってくれと言われることがあります。
これも簡単にはいきません。
そもそもいらないと言われているものは、ほとんどの人がいらないからです。
仮にタダ同然で売れたとしても、経費や税金がかかりますので、実際は赤字になることもあります
こうしたトラブルを起こさないためには、まず今後実家をどうするかを家族で話しておくことが大事です。
できれば親が元気なうちに、将来施設に入ったり認知症になったりした時、また亡くなって相続が発生した時にどうするかを決めておくと安心です。
どうするかが決まれば、相続でどう分割するかを考えておきます。
いきなり親の財産の相続の話など不謹慎と感じる方も多いと思いますが、介護のこと、現金や実家の管理などから、相続の話に進んでいくと以外とスムーズに話せると思います。
親としても子供たちに迷惑をかけたり、揉めたりすることは望んでいないので、今後どうやって兄弟姉妹が協力して親を支えていくかという話は、むしろ安心されると思います。
また、認知症になった時の対応は特に色々考えておくことが必要です。
認知症になれば、一切の契約行為ができなくなるため、実家の管理や介護の資金が大変になって、いざ売却しようとしてもできなくなります。
したがって、認知症対策は色んなことを想定して準備をする必要があります。
認知症対策については特に重要ですので、後ほど解説します。
実家が空き家になった場合、活用の方法は大きく4つに分けることができます。
家族の誰かが住む場合、空き家になってすぐに住むとは限りません。
その間はご近所に迷惑をかけないよう、いつでもすぐ住めるよう、ある程度の管理が必要になります。
きちんと管理をしていれば、売却することになってもかなり有利になります。
他人に貸す場合は、家賃が発生しますので、賃貸事業を行うことになります。
事業ですので、入居者に対してはある程度快適に住めるような状態を維持していかなくてはなりません。
つまり、建物や庭のトラブルがあった場合、基本的には大家さんが対処してあげなくてはなりません。
不動産会社が管理に入っていたとしても最終的には大家さんが色んな負担をしていくことになります。
事業としてお金をいただくにはそれなりに大変なことがあることも認識しておく必要があるでしょう。
ただし、借主自身がDIYで好きなように扱ってもらい、その他建物や庭木の管理は全て自分でやりますという人がいれば、固定資産税相当額や火災保険料くらいで貸すことも可能です。
その場合、安全性も含めて貸主は一切の責任を取らない旨を契約書などではっきりさえておけば問題ないでしょう。
維持管理費が不要になり、きれいにしてくれるのであればとても助かります。
売却するのが一般的ですが、以外と簡単に売れないものですし、売る側の責任や最低限やらなければならないことや費用などもかかってきます。
後ほど売却については詳しく注意点などについて触れたいと思います。
どう活用するかは「後」で考えようと現状のまま放置されるのがほとんどです。
「後」でが、「ずっと」になってしまっているのがこの空き家問題の根本的な問題です。
では、空き家を管理していくとは具体的にどんなことをするのでしょうか。
基本的には月1回程度建物内の掃除と換気、通水などを行います。
特に大雨や台風の後は雨漏りなどの確認が必要です。
外部は草刈りや清掃を行ないます。
年に何回かは樹木の剪定も必要です。
実家が近くにあり、時間や体力に余裕のある方はこうしたことが可能ですが、そうでない方にはなかなかハードルが高い内容です。
特に実家が遠方にある場合は物理的に難しいので、親戚などに頼まれるケースも多いようですが、頼まれる側のことを考えるといつまでも甘えることもできないかもしれません。
最近は空き家管理を行なう業者がいるため、有料にはなりますが、そういうところにお願いすることも検討してよいでしょう。
費用的には、月1回の点検で5千円~1万円程度が一般的です。
毎月点検後の報告と写真を送ってくれますので、草や樹木の伸び具合も確認でき、必要に応じて草刈りや剪定をオプション作業でお願いすることもできます。
自分が住まずに、他人に貸したり、売却する場合には原則として家の中の荷物は全て所有者側が処分しなくてはなりません。
いわゆる遺品整理と言われるものですが、これも結構大変です。
とりかかりは自分で出来そうに思えても、だんだん疲れて諦めるケースが多いようです。
一口に処分といっても、最近は分別が厳しくなっているため、たとえばタンスは木と金属を分けたりとか、まとめて捨てるということはできないため、以外と手間がかかります。
仮に業者に依頼する場合は、必要なもの以外はそのまま運び出して処分してくれますので、基本的には全てお任せしておけば何もしなくて大丈夫です。
作業は通常1日で終わりますが、荷物が多い場合や納屋にも荷物がある場合は2日かかることもあります。
費用的には一般的な住宅であれば、30万円~50万円、荷物が多かったり、進入路が狭かったりした場合には100万円近くかかります。
したがって、相続後にかかる費用として荷物の処分は頭に入れておいた方がよいでしょう。
実家を売却する場合、大きく分けて仲介と買取りという2つの方法があります。
仲介は、売主から売却の依頼を受けた不動産会社が買い手を探して、契約から引渡しまでの手続きをやってくれます。
成約したら仲介手数料をその不動産会社に支払いますが、金額は売買金額の3%プラス6万円(税別)となります。
一方買取りは不動産会社などの業者が直接買取る形ですので、仲介手数料は不要となります。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、そこを理解して依頼してください。
買いたい人(一般消費者)と直接契約するので、市場価格で売ることができます。
いつ売れるか、本当に希望価格で売れるか不透明なので、早く確実に売りたい人にとっては不安な部分があると思います。
また、一般消費者である買い手を守るため、契約不適合責任といって、売主が雨漏りや白蟻など、引渡した後に色んな問題が発覚した場合、保証しなくてはいけない法律ができていますので、空き家の場合特に注意が必要です。
買取りは業者(プロ)が相手ですので、契約不適合責任など関係なく、いくら欠陥があっても、それを承知の上で引き取ってくれます。
荷物の処分から手続きまで、手間や費用がかからないので、スピーディーにスムーズに売却できます。
したがって売却時期がはっきりして、現金化するのも早いのがメリットです。
業者は買取ってからリフォームして売るケースが多いので、仕入れとしての買取り価格はどうしても安くなります。
仲介の金額に比べてだいたい5割~6割程度が一般的です。
以上のように、同じ売るにも形態によってそれぞれメリット・デメリットがあります。
手間や時間、金額、経費、税金など、何を優先するかを明確にし、総合的に比較検討して選択することが賢明といえます。
また、空き家に少し手を加えて売却した方がよい条件で売れるのか、解体して更地にする方がニーズに合っているのか、その資金を事前に用意できるのかなど少しでもいい条件で売りたい場合は、自分で加工して付加価値を付けて売ることも可能です。
いずれにしても素人では難しいので、不動産会社に色んなパターンを数字でシミュレーションしてもらって、最終的な手残り額などを一覧表にしてもらうと比較がしやすくなります。
売却の際、売主が原則としてやらなければならないのが境界の明示です。
隣との境界がはっきりしていない状態で買い受けてしまうとトラブルが起こった時に買い手が困ります。
したがって、境界杭が不明なものは復元するか、立ち会って新たに杭を打つ必要があります。
しかしながら境界杭は個人が勝手に打っても何の効力もなく、誰かが抜いて違う位置に打ち直す可能性もあります。
そこで一般的には土地家屋調査士にお願いして、杭を打ってもらいます。
いわゆる測量士さんですが、資格を持っていらっしゃるので、その杭は客観的に信用性のあるものとなります。
土地家屋調査士が杭を打ったら、必ず立会いをした隣接者や区長さんなどから確認のサインと印鑑をもらって写真も撮られますので、後にトラブルになっても証拠として杭の位置が保証されるというわけです。
また、杭を打つ際、地積調査済の土地と未調査の土地では杭の打ち方が全く違ってきます。
地籍調査とは国土調査の一つで、主に市町村が主体となって、一筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査です。
確定した境界はデータ化され市町村が保管しています。
境界杭が不明になった場合は、データから復元することによって杭を打ち直すことができるため、新たに境界を決める必要がありません。
したがって、復元した杭を隣接者の方にここで間違いか確認してもらうということになります。
一方、地積調査が終わっていなければ、はじめから隣接者と一緒に立ち会って、どこを境界にするかを現地で決めて杭を打ちます。
そこで両者の意見が一致しなければ杭を打てなくなります。
そうなると売却が難しくなり、価格を大きく下げられる要因になります。
意見が一致しないのは、昔はどうだったとかお互い主張が食い違うことが多いですが、親の時代、祖父の時代からずっと隣と仲が悪かったため、協力しないというケースも以外と多かったりします。
やはり境界がはっきりしていないと買い手は不安になりますから、事前に隣接者には協力してもらえるよう、日ごろから意識しておいて方がよいでしょう。
親が自分の不動産を売却したら譲渡所得として所得税・住民税がかかります。
短期譲渡(取得後5年以内に売却)であれば約40%、長期譲渡(所得後5年以降に売却)であれば約20%が売却益に対して課税されます。
親はほとんどが5年以上実家に住んでいますので長期譲渡になりますが、売却金額から取得金額・経費を引いたものが売却益となるため、建築時や購入時の契約書や領収書があればほとんど課税されることはありません。
しかし親が実家を購入した当時の資料を保管しているケースは少なく、取得金額は0円ということになるため課税対象になります。
売却額の5%は所得費として認められますが、ほぼ売却金額全額が売却益となるため、売れた金額の約2割を翌年に確定申告して納税することになります。
だたし、特例を利用すると軽減措置を受けることができます。
それが、居住用財産の3000万円特別控除といわれる税制特例です。
特例には、下記のいずれかを満たすマイホームであることが要件です。
相続した実家を売却する場合にも、取得金額がわかる資料がなければ、売却金額の約20%が譲渡所得税となります。
この場合も譲渡所得3000万円特別控除という特例が使えます。
内容は、相続によって取得した空き家を被相続人が死亡した日以後3年を経過した年の12月31日までに譲渡したときは、譲渡して得た利益から3000万円を控除できるというものです。
要件としては以下のようなものがあります。
前述した譲渡所得税、住民税の他に、国民健康保険に加入している方は、翌年保険料が上がる可能性があります。
これも特別控除後に売却益があった場合のみとなりますが、農業従事者や無職の方は注意が必要です。
また境界杭の復元費、遺品整理費、仲介手数料、登記関係費用などの経費がどれだけかかるかは、概算で把握しておいてください。
後からだと兄弟姉妹に請求しにくいところもありますので、事前に共有して、売却したお金と同時にこういう経費をどう負担し合うのかも決めておいた方がよいでしょう。
一般的な不動産会社では、ここまで踏み込んでアドバイスしてくれるところは稀ですので、こちらから尋ねてみてください。
売却をお願いする不動産会社を選ぶ際、査定の金額以上に売却に付随する税金や経費などを教えてくれたり、売却方法によって手残り額がどう変わるかなど、質問にきちっと答えてくれる業者かどうかを見極めることも重要です。
できれば相続に詳しい業者だと色んな相談にも乗ってくれると思いますので、試しに私の場合相続税かかりますかね?などの質問をしてどういう対応をされるか確認してみるのも一つの方法かと思います。
これまで空き家の実家が売れる前提でお話してきましたが、地方の空き家はなかなか買い手がつかないのが現状です。
長年親が住んできた実家ですから、築30年以上経過している家がほとんどです。
ましてや空き家で放置してある時間が永ければ、想像以上に老朽化が進み、いわゆる廃墟化したり、蔦が家を覆うくらい伸び放題になっていたり、買う気持ちが失せるものもたくさんあります。
また、コンビニやスーパー、学、校、病院など生活に不便な場所にあればなおさら売れなくなってしまします。
しかし、立地や物件の特徴次第では、ピンポイントでニーズがあったりしますので、決して諦める必要はないと考えます。
もちろん金額的なことは望めませんが、とにかく処分優先であれば何とかなるものです。
これまでに売れずに諦めていた空き家を処分、活用してきた事例を紹介します。
崩れる危険性があったり、道路に瓦や壁が落ちてきそうな状態だったり、草や木が家に入れないほど伸びていたり、安全、衛生、防犯などの観点から危険と判断されれば特定空き家というものに指定される可能性があります。
特定空き家に指定されると市町村から解体命令が出て、従わない場合は行政代執行で解体費を請求されることになります。
しかし、行政によってはその解体費の一部を補助してくれるところがありますので、うまく活用できれば、いずれかかる解体費をかなり補うことができます。
これまでこの補助金を使って解体し、我々業者が更地の状態で買取り、住宅用地として家を建て販売した実例がいくつかあります。
空き家問題は行政としても深刻な問題で、空き家が増えてくると街全体が荒れてくるので、補助金などを出してくれる自治体は結構あるようです。
解体し更地にすると翌年から固定資産税が最大6倍に上がりますが、更地化によって売却できるのであれば初期投資をしてでもやる価値はあると思います。
実家を解体しても、現在の建築基準法では新たに建築できない土地があります。
主な要因は道路です。
宅地と公道の関係で、幅員とか接道が現行の建築基準を満たしていない土地が結構存在しており、その場合再建築ができません。
所有者も売却するまでその事実を知らないことが多く、まさか実家が建替えできないなんてと愕然とされることがよくあります。
近い将来解体しないといけないような古家がついていて、その後建築できないような土地をわざわざ買う人はほとんどいません。
つまり価値が大きく下がってしまうわけです。
また、再建築不可の物件には銀行は融資をしてくれないため、購入者は現金で購入できる方のみとなってしまいます。
実家がこうした再建築不可の場合、何とか建物を活用するしかありません。
しかし、一般の人はこれを活用するのは大変難しいため、投資家の方に買ってもらい、再生して賃貸物件として活用してもらう方法があります。
購入して住むわけではないので、建替え不可のリスクはなく、賃貸事業として収支があえば問題ありません。
賃貸用ですから、完璧にリフォームする必要はないため、工事費をそれほどかけずに再生することができます。
こうした物件は初めから瑕疵といって、欠陥があることをわかって買ってもらえるので、不動産業者が買取るのと同様、全て現状のまま引き渡すことができます。
荷物の処分なども投資家がやってくれる代わりに売却金額は安くなります。
ただ一般の人が買わない物件を安くても何も手をかけずに、何の文句も言わず買ってもらえるなら渡りに船です。
実家の前道や進入路が狭かったり、崖が近いところにある場合は、再建築ができるかどうかは事前に確認しておくことをおすすめします。
建物が使えなくても、利便性のよい場所なら解体して土地として売れますが、不便は田舎ではそうもいきません。
立地、環境、敷地・建物の広さ、建物の特徴などによって、購入ターゲットを絞れば以外と買い手がついたりします。
リモートワークが定着してくれば、パソコン一台で田舎の伸び伸びした環境で子供を育てながら仕事ができたり、一部自給自足しながら生活したいという移住者が増えてくることが予想されます。
農地もタダで使えて、リフォームも自分たちでボチボチ楽しみながらやってくれるとなれば願ったり叶ったりです。
こうした田舎の実家をちゃんと活用してくれる人がいたら絶好のチャンスですので、金額にこだわらず、喜んで手放した方がよいでしょう。
一番困るのは、将来名義を変えられずに子や孫が永遠にをし続けなければならなくなることですので、現状を理解してチャンスがあれば思い切って手放す勇気も必要です。
その他、建物や敷地が広く、道路も問題なければ、グループホームなどの施設が購入してくれたりします。
また、雨漏りや白蟻さえなければ、トランクルームとして活用される人もいます。
マンション住まいで荷物を置く場所がない人はトランクルームを借りて毎月賃料を払っています。
熊本市内で6畳程度の広さを借りると平均3万円くらいの賃料になります。
少し遠くにはなりますが、荷物が多い人にとっては、タダ同然で購入できれば毎月の賃料は不要になり、ある程度大きなものも収納できます。
どうしても売れない物件については、売主がお金を払ってでも名義を変えるということもあります。
つまり懸賞金付不動産ということになります。
特に前述したように、農地や山林も含めて全て名義を変えていまいたいという人にはこの方法をおすすめします。
お金をくれるならもらってあげてもいいよという人がいるものです。
実家を相続する際には、遺産分割協議を行なって、その合意の証明として遺産分割協議書という書類を作成し、各人が実 印で押印し印鑑証明書を添付することになっています。
遺産分割協議は法定相続人全員で行なう「民法と異なる割合での相続財産の分け方を決める話し合い」のことですので、全員漏れなく同意しなくては成立しません。
したがって法定相続人の中で一人でも行方不明者や認知症の方がいれば作成できず、相続できなくなってしまいます。
現預金は均等分けることができるため簡単ですが、実家は分割できないため、分け方が問題になりがちです。
実際に実家を相続する際、遺産分割方法は4つあります。
「自宅は妻に、預貯金は長男に譲る」など、財産目録の項目ごとに分割する方法を「現物分割」といいます。
最も一般的な遺産分割方法であり、相続人が少なければシンプルでわかりやすく、相続もしやすいというメリットがあります。
現物分割を行うと、法定相続分と一致しない場合があります。
たとえば相続人が長男と次男のみで、兄が1000万円の自宅を、次男が500万円の預貯金を相続した場合、明らかに次男にとって不利な相続となります。
この場合、長男が自宅を相続する代わりに、次男に250万円を現金で渡せば公平性が保てます。
このように実家を相続した人が、その他の相続人に現金でバランスをとるやり方を代償分割といいます。
上記のように、現金で250万円渡せれば問題ありませんが、それができない場合、現物分割を諦めて自宅を売却し、1000万円(自宅)+500万円(預貯金)=合計1500万円の現金を、兄弟で750万円ずつ分け合えば、公平な分割になります。
これが換価分割です。
相続人が、各々に自分たちの「持ち分」を決めて登記するという方法があります。これを共有分割といいます。
たとえば3人で共有する場合、「3分の1ずつ」や「2分の1、4分の1、4分の1」などとなり、全員の共有持分を合計すると「1」になるのが通常です。
公平性は保てますが、単独での利用や処分ができませんので、売却するには全員の同意が必要となります。
金額や条件面で一人でも反対する人がいたら契約できないため、もめる原因になることが多いものです。
今は相続人同士の仲が良いとしても、共有者が亡くなったり、次世代に引き継がれたときに共有者同士の関係が複雑になるというリスクがあります。
売れることがわかっていたり、税金の関係で共有にしてもよいケースは稀にありますが、手続きの煩雑さ、トラブルの可能性を考えると共有は避けるべきです。
分け方は以上の4つですが、大事なことは、相続した実家をどうするかを決めてから、遺産分割を決めるという順番で話を進めるということです。
実家をどうするかは後で考えることにして、とりあえず共有名義にしておこうかと安易になりがちですが、実家をどうするかによって、誰が相続するかが変わってきますし、何より揉めることがなくなります。
また、実家以外に現預金がある場合、実家の価値がどれくらいあるかということを把握しておかないと、公平に分割できない可能性があります。
つまり実家の価値を現金に置き換えたらいくら相当になるのかをある程度確認しておく必要があります。
実家の評価は、固定資産税評価や路線価などの課税評価と、売ったらいくらになるかと実勢価格の2つがあります。
相続した後売却するのであれば実勢価格、しばらく保有しておくのであれば固定資産税評価など、実家をどうするかでどの評価で分割のバランスをとるかは変わってきます。
厳密にいえば、誰か一人の単独名義で相続し売却したとすると、その売却した相続人が売買代金から、色んな経費や税金を払わなければならないため、そこまで計算した上で実家の評価を考えるべきです。
田舎の古い家の固定資産税評価額はどれも大差ありません。
しかし家の程度や活用の可能性次第で実勢価格は大きく変わってきます。
たとえば前述したように、解体して再建築できる土地であれば、最低土地の価値はありますが、そうでなればほとんど価値がなくなってしまうかもしれません。
したがって、白蟻や雨漏りはないか、柱の傾きはないか、境界ははっきりしているか、再建築できるか、解体費はいくらくらいかかるかなど、実家の現状と実際の価値を把握しておくことが大事になってきます。
親が認知症になると判断能力がなくなり、財産の管理・処分ができなくなります。
本人確認ができなければ預貯金を降ろすこともできなくなり、当然実家の売却もできなくなります。
草刈りに手が回らないから売りたい、実家を売って施設の費用を賄いたいと思っても、売ることができないという状態が続くことになります。
そうなると亡くなって相続するまで実家は動かせないということになるため、家族にとってはかなりの重荷になってきます。
したがって親がそういう状態になる前に対策をしておく必要があります。
築年数が40年以上経っている実家であれば建物の評価は100万円以下のことが多く、贈与税の非課税枠110万円以下であるため、子供に贈与しても税金はかかりません。
土地評価も田舎であれば安いため、実家の名義を子供に移しておく、つまり贈与しておく方法は有効です。
上記のように年間110万円の非課税枠を使った暦年課税の申告が一般的ですが、相続時精算課税という2000万円の非課税枠を使える申告方法もありますので、贈与を上手く活用すれば、名義が子供にありますので、いざという時には活用や処分が可能となります。
また親が既に認知症になってしまった場合、成年後見人制度というものがありますが、後見人は親である被後見人の財産を守るのが使命ですので、家族の都合で売却することは裁判所が認めす、売却できないというのが実状です。
それに代わる制度として、いわゆる家族信託、民事信託という制度が最近マスコミでも話題になっているように、認知症対策としてはかなり有効となっています。
信託と聞くと信託銀行のようなものを連想しますが、家族信託とは言葉のとおり家族の誰かに自分の財産を信じて託すものです。
具体的には委託者(親)が判断能力のある元気なうちに、受託者(一般的には子供の誰か)と信託契約をし、将来認知症になっても受託者が委託者の財産を管理・処分できるというものです。
信託契約をしたら、その権限つまり所有権が移転したことを示す登記がなされます。
つまり実家の場合、名義は子供などの受託者に移るわけです。
ただし、売却して得たお金や貸して得た賃料は全て親(受益者)のもので、受託者である子供はそのお金を使うことはできず、別口座を作って管理のみ行なうことになります。
また親(受益者)が亡くなって相続が発生した場合、その財産から得られるお金を誰が受け取るか(第2受益者)というのも、信託契約の時に決めておくことができます。
そうすると、将来親が認知症になっても、受託者の権限で実家をどうするかを決めることができ、亡くなった後もスムーズに相続ができます。
信託契約の組成と登記は行政書士や司法書士が行ないます。
その費用は信託財産の規模や内容によって変わってきますが、決して安くはありません。
したがって、実家だけに限定した信託であれば比較的安価でできる可能性があります。
仕組み自体は最近認識されるようになってきましたが、まだまだ一般の行政書士・司法書士・金融機関・不動産会社などは実際に扱ったことがなく、手続きがスムーズに進まないことが予想されます。
相談する場合は、信託や相続に詳しい士業や業者を探す必要がありますが、 一度説明と見積もりをとって、早めに信託契約をしておくことをおすすめします。